10月号「所感」
今月の所感のご紹介となります。
*2025年9月号 所感 ********************
無事に第52回御岳山講習会も、 晴天に恵まれ盛会のうちに終了した。
私は初級を担当させていただき、 24名の参加者の皆様と共に学ぶ機会をいただいた。 今年の最年少は高校3年生で、 普段はなかなか山の上で書道をする経験は少ないと思うが、 自然豊かな環境の中で有意義な時間を過ごしていただけたのではないかと感じている。若年層の参加者が増え活気も出てきたことがとても嬉しいことである。
一方で、 かつては山の上では必要とされなかったエアコンが、 昨年からは不可欠となってきており、 気候変動の影響を身近に感じる場面もあった。
御岳山は都心からもそう遠くなく、 標高約900メートル、 豊かな自然と落ち着いた空気に触れられる場所なので、 ぜひ多くの方に足を運んでいただきたい。
自然に囲まれた空間で筆を運ぶと、 日常の雑念から解き放たれる感覚がある。 講習会での学びはもちろん、 仲間と共に過ごした時間も大きな財産となる。 同じ志を持つ者が一堂に会し、 互いの姿勢や作品から刺激を受けることができたことは、 今後の会員皆様にとっても大きな励みになることだろう。 西は長崎県、 東は新潟県からの参加者もあり感謝の気持ちで一杯だ。
さらに今回は、 思いがけない出会いがあった。
夜、 各宿坊に顔を出した後、 日付が変わる頃に南山荘から御嶽山荘へと戻る途中、 「ガサガサ、 ブヒッ、 ブヒッ」 という音が街路灯のあかりひとつの中、 前方20メートル位先より、 鳴き声がした。 もしやと思い急いで引き返し、 宿坊の方に同行していただき、 懐中電灯で照らしていただきながら同じ道を通ったところ、 暗闇の中に光る二つの目が――。 そこには天然記念物のニホンカモシカの姿があった。 静かな森の中でふと現れた野生の力強さを感じさせると同時に、 自然の中で生きる生命の尊さを実感させてくれた。 熊やイノシシでなく安堵した。
都会では決して味わうことのできない、 貴重な体験であった。
御岳山講習会を通じて得られたものは、 単なる技術の習得にとどまらない。 こうした自然との触れ合いや、 日常とは異なる環境での研鑽が、 新たな発想や表現の広がりを生み出してくれるように思う。
今回の経験を心に刻み、 今後の稽古に活かし、 さらに精進していきたいと考えている。
御嶽山夏季講習会は普段では指導いただけない先生方に習うことが出来る、 またとないチャンスであり、 来年は更に多くの参加者が増えることを切に願う。
*(耕史記)****************************