6月号「所感」
今月の所感のご紹介となります。 *2026年6月号 所感 ******************** 本年も銀座鳩居堂画廊に於いて開催した選抜展を、 盛況俚に終えることが出来た。 毎年恒例となっており、 今年もご多忙のなか多くの方々にご来場いただきましたこと、 心より感謝を申し上げたい。 展覧会は作品だけで成り立つものではなく、 それを支えてくださる多くの方々のお力添えによって、 一つの空間として完成していくものであることを、 毎年あらためて実感している。 書作品は揮毫を終えた時点で完成するわけではない。 軸装や額装といった表装を経ることで、 作品には新たな命が吹き込まれる。 今回も祥雲堂の池田さんには大変お世話になった。 作品一点一点の個性や息遣いを丁寧に汲み取りながら施される装丁 は、 まるで作品に衣装を纏わせるようであり、 その洗練された感性には毎回感心させられる。 作品を書いた本人以上に、 その可能性を引き出してくださる瞬間もあり、 表装の力の大きさを痛感している。 また、 書鏡院の選抜展と言えば、 「書」 と 「花」 の二本立てとも言われるほど、 会場を彩る挿花が参観者の目を楽しませてくれる。 今年も池坊総家督の菅美波先生とお嬢さまには多大なるご厚意を賜 った。 長年にわたり変わらぬご支援をいただいていることに、 感謝の気持ちで一杯である。 花が添えられることで、 会場には書だけでは生まれ得ない柔らかな空気が流れる。 墨の緊張感のなかに花の潤いが加わり、 空間全体に調和が生まれるのである。 来場者の方々からも、 「心地よい空間だった」 「時間を忘れて作品を観ることが出来た」 とのお言葉を多く頂戴した。 単に作品を展示するだけではなく、 訪れてくださった方々に穏やかな時間を過ごしていただけることが 何より嬉しいことである。 今回の展示では、 「ただ在りて尊し」 という言葉をしたためた。 病床に伏し、 長きにわたりベッドでの生活を余儀なくされている父の姿が、 その背景にある。 自由に身体を動かすことは叶わなくとも、 ただそこに居てくれるだけで、 どれほど大きな支えであり、 心の拠り所であるかを感じる。 人は何かを成し遂げることや、 役割を果たすことに価値を求めがちであ...