投稿

11月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年11月号 所感 ********************  朝夕の空気に、 少しずつ秋の深まりを感じるようになりました。 会員諸氏の皆さまはいかがお過ごしでしょうか。    ついこの間まで暑さを気にしていたように思いますが、 季節は確実に歩みを進めています。 こうして一日一日を過ごしていると、 本当に月日の経つのは早いものだと、 改めて感じております。 今年もまだまだ、 やりたいこと、 やらなければならないことがたくさんあり、 そう考えると、 感慨にふけっている場合ではなく、 さあ、 ここから、 という気持ちで、 残された令和八年の時間を大切にしていきたいと考えます。  今月二十四日から始まる展覧会です。 会員の皆さんにとって、 展覧会は日頃のお稽古の成果を発表する大切な場であることはもち ろんですが、 小生はそれだけではないと思っています。 作品を仕上げるまでの過程、 思うように書けず悩んだこと、 何度も書き直したこと、 そして最後に 「これでいこう」 と筆を置いた瞬間、 その一つひとつが、 皆さんの書の歩 みそのものです。 だからこそ、 出品された方には、 ぜひ多くの方に作品を鑑賞して欲しいと思います。  そこでお願いがあります。 会員の皆さまには、 ご家族やご友人、 職場の方、 お知り合いなど、 一人でも多くの方にお声がけをいただき、 展覧会を一緒に盛り上げていただきたい。 「今度、 書道の展覧会があります。 よかったら見に来てください」 そんな何気ない一言が、 新しい人と書との出会いにつながるのかもしれません。 会場に一人でも多くの方が足を運んでくださることで、 作品にも新たな命が吹き込まれることでしょう。 是非、 皆さまのお力で、 明るく活気のある展覧会にしていただければと思っています。    そして、 もう一つ大切な活動があります。 十二月一日には、 品川学園の小学六年生を対象に、 恒例となりました 「文字の贈りもの」 の授業を開催いたします。 子どもたちが筆を持ち、 自分の名前や好きな文字を書く。 その中で、 文字の面白さや書く楽しさを感じてもらう貴重な時間です。 私たちにとっては何気ない一枚の作品でも、 子どもたちにとっては、 その日、 その場所でしか生まれない大...

第67回 日本書鏡院展が本日10月24日より始まりました

イメージ
      第67回、日本書鏡院展を上野、東京都美術館で開催致し ます。 期間は、2026年10月24日(土)から、2026年 10月30日(金)まで、 入場は9:30〜17:00ま で(最終日は14:00まで)となっております。     児童、大人 の様々な作品をお楽しみ頂けます。 是非お越し下さい。

10月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年10月号 所感 ********************  豪雨や地震など、 このところ日本各地で自然災害が続いております。 改めまして、 被害に遭われた皆様、 そして本院の会員の皆様に、 心よりお見舞い申し上げます。 一日も早く穏やかな日常が戻りますことを願っております。  展覧会の開催が、 近づいてまいりました。 月日が経つ早さを実感しております。 過日、 児童生徒の部の一次審査を終えました。 一点一点の作品を前にしていると、 「この一枚を書くために、 どんな気持ちで筆を持ったのだろう」 と、 子どもたちの姿が思い浮かびます。 小さな身体で筆を握り、 お手本を真剣に見つめ、 一生懸命に書いた作品の一枚一枚に、 それぞれの努力と時間が詰まっているのだと。  審査をすることは、 決して簡単なことではありません。 作品づくりへの取り組み方は、 支部によって違いが感じられ、 評価をつけることの難しさ、 苦しさを改めて感じました。 点数そのものは昨年より僅かに増えましたが、 出品される支部の数が減っていることには、 少し寂しさも覚えました。 子どもたちを作品づくりへ導くことは、 大人の指導とはまた違った難しさがあります。 集中できる時間も一人ひとり違いますし、 お手本の見方も違います。 真剣な眼差しで一画一画を読み取ろうとする子もいれば、 自分の感覚で筆を進めていく子もいるでしょう。 子どもたちと向き合っていると、 こちらが教えているつもりで、 いつの間にかこちらが教えられていることがあり、 子どもたちの純粋さや一生懸命さから、 指導者たちも大きな力をいただいているのだと思う。 そして今回、 改めて感じたのが 「お手本」 の大切さです。 なぜ、 このような作品になるのだろうと考えるとき、 その背景には、 お手本をどのように見ているかということが大きく関係しているよ うに思います。    「守破離」 という言葉があります。 まずは、 お手本や師の教えを守る 「守」。 そこから自分なりの工夫を加えていく 「破」。 そして最後には、 学んだものを土台として、 自分自身の書を切り開いていく 「離」。 作品づくりは、 まさにこの道筋なのではないかと思っています。 児童生徒の部では、 まずお手本をよく見て、...

9月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年9月号 所感 ********************  書を通じて広がる、 世界とのつながり。  先日、 品川の地でラクロス女子世界大会が開催され、 世界16カ国から選手や関係者が集まり、 熱戦が繰り広げられた。  ラクロスという競技をご存じでしょうか。 ラクロスは、 先端に網のついた 「クロス」 と呼ばれるスティックでボールを操り、 相手ゴールにシュートを決めて得点を競うスポーツです。 スピード感あふれる展開と、 選手同士の激しい攻防が魅力で、 華麗なパス回しや巧みなボールコントロールが繰り広げられます。 そして、 ラクロスは次回のロサンゼルス五輪での実施競技にも認定され、 今後ますます世界的な注目を集める競技となることでしょう。  今回我々は、 会場の一角で、 選手や関係者の方々に向け、 名前を漢字に当てはめて団扇に書くなど、 書を通じた交流の機会をいただいた。 自分の名前が漢字になり、 それを目の前で書いてもらうという体験を、 海外の方々は大変喜んでくださった。 同じブースでは折り紙体験も行われた。 日本ならではの伝統文化に触れていただくことが出来、 言葉が十分に通じなくても、 書や折り紙を介すことで、 自然と笑顔が生まれ、 心が通い合う。 日本文化の素晴らしさを、 改めて感じるひとときとなった。  今回は開催間際の依頼であったため、 当院からは、 日頃よりインバウンド向けの体験会などで活躍してくださっている 会員の皆様にご協力をお願いした。  急なお願いにもかかわらず、 快く力を貸してくださり、 盛況のうちに無事終えることができた。 この場をお借りして、 改めて心より感謝を申し上げたい。  中でも、 アルゼンチンやプエルトリコの皆様からは大変な好評をいただき、 漢字を書くという日本独自の文化が、 国境を越えて人の心をつなぐ力を持っていることを実感出来た。  書というものは、 机に向かって静かに取り組むだけではないのかと。 今回のように、 実際に人前で書く経験を重ねることで、 次第に自信を持って筆を運べるようになるのだと。 上手に書くことだけが、 すべてではありません。 柔らかな筆をどのように使うのか。 どのような姿勢で筆を持つのか。 そして、 人前でも堂々と振る舞い、 自分の書を相手に届け...

8月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年8月号 所感 ********************  暑中お見舞い申し上げます。  例年であれば厳しい暑さに見舞われる頃ですが、 今年は梅雨寒を感じる日もあり、 比較的過ごしやすい日が続いております。 皆様いかがお過ごしでしょうか。  毎月の競書課題に真摯に向き合い、 一文字一文字と誠実に対話を重ねていることと拝察しております。 日々の積み重ねこそが書の力となり、 自身の成長へとつながっていくことでしょう。 焦ることなく、 自分の歩幅で筆を進めていただきたいと思います。  今回は、 支部に所属せず、 個人で 『書鏡』 の課題に取り組んでくださっている会員の皆様へ、 耕南千字文の楷書について、 少しお話ししたいと思います。  先師・長谷川耕南の千字文は、 羊毛筆を用いて揮毫されたものであり、 一見すると端正な楷書ですが、 その中には隷書の趣や行書の流れが巧みに織り込まれています。 そのため、 単純に楷書として形だけを追いかけても、 耕南らしい表現には近づくことができません。  羊毛筆ならではの柔らかさと弾力を生かしながら、 起筆・送筆・収筆の変化を丁寧に表現し、 一画ごとの呼吸を大切にすることが肝要です。 筆を必要以上に立てすぎず、 穂先だけで線を引こうとせず、 穂全体を上手に使いながら運筆することで、 豊かな線質が生まれてきます。  また、 耕南の楷書には隷意が多く見られます。 横画のゆったりとした伸びや、 わずかな波勢、 結体の安定感などは隷書を学ぶことで理解が深まります。  一方で、 字によっては行書的な筆脈が感じられ、 点画が独立しているようでありながら、 全体には自然な流れが生まれています。 この絶妙な調和こそが耕南楷書の大きな魅力であり、 同時に難しさでもあります。  そのため、 お手本を見ながら 「形を写す」 ことだけに意識を向けるのではなく、 「なぜこの線になっているのか」 「なぜこの方向へ筆が動いているのか」 を考えながら臨書することが大切です。 一字一字を観察し、 筆の入り方や力の加減、 穂先の使い方まで想像しながら書く習慣を身につけることで、 理解は飛躍的に深まるでしょう。  上達への近道はありません。 しかし、 毎月少しずつでも継続して筆を執ることで、 昨日見えなかったこと...

7月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年7月号 所感 ******************** 【台湾書法交流会を終えて】  台北において、 5月31日に台湾の書法家10名と日本書鏡院会員20名による書 法交流会を開催いたしました。    おかげさまで大変有意義な時間となり、 多くの学びと感動を得ることができました。 今回の交流会開催にあたりましては、 台湾書壇を代表する張炳煌先生をはじめ、 多くの先生方のご協力を賜りました。  日本と台湾は地理的にも近く、 古くから文化的な交流を続けてきましたが、 実際に同じ空間で筆を執り、 作品を共に創り上げる機会は決して多くはないでしょう。 その意味においても、 書道の交流会は大変貴重であり、 意義深いものであったと感じております。  交流会の中心企画として、 中国唐代の詩人・張継の名詩 「楓橋夜泊」 を、 参加者全員で一字ずつ順番に揮毫し、 一つの作品を完成させました。 あえて書体を限定せず、 それぞれが最も得意とする表現で文字を書き継いでいく方法で進め ました。 楷書、 行書、 草書、 篆書、 隷書など、 多彩な書風が一つの作品の中に共存し、 まさに日台両国の個性と感性が融合した作品となりました。  揮毫に際しては、 台湾の先生方がその場でお手本を書いてくださる場面もありました 。 同じ漢字文化圏にありながら、 筆の使い方や線質の表現、 字形に対する考え方など、 日本との違いを数多く感じることができました。 言葉の壁は確かに存在しましたが、 通訳を介して互いに理解を深め、 時には筆を通して意思を伝え合うことができたことは、 書という芸術の持つ大きな力を改めて実感する機会となりました。  書道は文字を書く技術であると同時に、 人と人とを結び付ける文化でもあります。 国籍や言語が異なっていても、 一枚の紙に向かい、 同じ時間を共有しながら筆を運ぶことで、 自然と心の距離が縮まっていくことを感じた瞬間でした。  今回完成した作品には、 参加者一人ひとりの思いと熱意が込められております。 本誌一頁に掲載した写真からも、 その雰囲気の一端を感じ取っていただければ幸いです。  もちろん、 初めての試みであっただけに反省点も少なくありません。 進行方法や準備、 時間配分など、 改善すべき課題も見えて...

6月号「所感」

  今月の所感のご紹介となります。  *2026年6月号 所感 ********************  本年も銀座鳩居堂画廊に於いて開催した選抜展を、 盛況俚に終えることが出来た。 毎年恒例となっており、 今年もご多忙のなか多くの方々にご来場いただきましたこと、 心より感謝を申し上げたい。  展覧会は作品だけで成り立つものではなく、 それを支えてくださる多くの方々のお力添えによって、 一つの空間として完成していくものであることを、 毎年あらためて実感している。  書作品は揮毫を終えた時点で完成するわけではない。 軸装や額装といった表装を経ることで、 作品には新たな命が吹き込まれる。    今回も祥雲堂の池田さんには大変お世話になった。 作品一点一点の個性や息遣いを丁寧に汲み取りながら施される装丁 は、 まるで作品に衣装を纏わせるようであり、 その洗練された感性には毎回感心させられる。  作品を書いた本人以上に、 その可能性を引き出してくださる瞬間もあり、 表装の力の大きさを痛感している。    また、 書鏡院の選抜展と言えば、 「書」 と 「花」 の二本立てとも言われるほど、 会場を彩る挿花が参観者の目を楽しませてくれる。    今年も池坊総家督の菅美波先生とお嬢さまには多大なるご厚意を賜 った。 長年にわたり変わらぬご支援をいただいていることに、 感謝の気持ちで一杯である。  花が添えられることで、 会場には書だけでは生まれ得ない柔らかな空気が流れる。  墨の緊張感のなかに花の潤いが加わり、 空間全体に調和が生まれるのである。  来場者の方々からも、 「心地よい空間だった」 「時間を忘れて作品を観ることが出来た」 とのお言葉を多く頂戴した。 単に作品を展示するだけではなく、 訪れてくださった方々に穏やかな時間を過ごしていただけることが 何より嬉しいことである。    今回の展示では、 「ただ在りて尊し」 という言葉をしたためた。 病床に伏し、 長きにわたりベッドでの生活を余儀なくされている父の姿が、 その背景にある。  自由に身体を動かすことは叶わなくとも、 ただそこに居てくれるだけで、 どれほど大きな支えであり、 心の拠り所であるかを感じる。  人は何かを成し遂げることや、 役割を果たすことに価値を求めがちであ...