6月号「所感」

今月の所感は、選抜展開催に踏み切った会長の想いと、名誉会長の近況報告となっております。

*2021年6月号 所感  ********************  

 ぎりぎりまで悩んだ第37回日本書鏡院選抜展。
 鳩居堂が休業したら、 今年も中止という方向で諦めるしかなかったが、 営業するという判断のもと出品者の作品に息吹を吹き込むため、 開催という方向で決断した。 コロナ禍前の入場者は毎年二千人以上の来場者でのにぎわいに比べ、 今年は三分の二減少した。

 家族に 「行かない方がいい」 「なぜ行くんだ」 「この時期になぜ開催するんだ」 と言われながら来たという先生がほとんどだった。 当然その言葉が当てはまる。
 ただ先生方より次のようなお言葉をたくさん頂き、 小生は随分と救われた。
 「私のような年を重ねるとこの一年、 一日がとても大切で、 日々を大事に過ごしている中で、 私の人生の一部である鳩居堂に出品し、 この空間で作品を鑑賞することが日課であるから本当に開催してもらえて嬉しかった。 ありがとう。 今年はゆっくり見ることができたわ。」
 「家族に止められたけど、 作品集を見たらどうしても鳩居堂でちゃんと見たかったからこっそり内緒で来ちゃった。 すぐに帰るわね。」
 今回の開催には賛否があるかと思われるが、 少なからず作品を次の年まで眠らせることはどうしてもできなかった。 なぜなら作品も出品者の創作当時の思い・心境を乗せながら制作をしているからだ。 また来年、 一から進めていくためにも区切りとして開催に踏み切った。

 選抜展に合わせて、 高校三年生まで書道を続けた生徒に数年前より表彰を始めた。 今年はコロナ禍であったが多数の生徒が親御さんとご来場され、 表彰をうけた。 支部の先生より、 「色々な事情がありながらも、 書道だけはずっと続けてきており、 今回この表彰を受けるにあたり、 本人並びに保護者がとても喜んでいた。」 と連絡を受けた。
 「長く続けてきた書道で皆さんの前で表彰され、 拍手されたことが、 本人の自信、 さらには次なる社会への第一歩を踏み出すための節目となった。」 とお話を受けた。 これはひとえに支部長先生が丁寧に一人一人の心を大事にしながら生徒に向き合ってきたことがなければ実現できなかったことである。
 今現在のコロナ禍で、 若年層が心の病を持っているという報道が多く見かけられる。 軒並み修学旅行・遠足・体育祭・文化祭が中止になり、 悩みを親にも相談できない。 学校の先生にも相談できない。 そんな声が多数あるそうだ。 子供ホットラインの電話も鳴りやまず 「居場所がない」 と訴える子供がいるという。 そんな時に第三者である、 私達が寄り添い、 話を聞くだけでも子供達の救いになるのではないか。 小生は書道だけの指導がすべてではないと考える。 今こそ子供と触れ合える機会があるのであれば、 書を通して、 子供達の心に寄り添っていこうと考える。

 さて父耕生への励ましのお言葉を会期中たくさん頂いた。 この会期中は特養のショートステイを利用しており、 本来、 私達家族の希望は鳩居堂に車いすで連れて行くことであった。 しかし残念ながら車いすに座れる時間がまだ二時間程度ということもあり、 今年は断念せざるを得なった。
 今回は新しい施設なので、 父に必ず聞くことがある。 食事の事だ。 「ごはんおいしい?」 「普通で田舎風」 「おやつはどんなのが出るの?」 「まんじゅう」。 たわいもない話だが、 毎日0・1・2・3の短縮番号を押して、 電話で会話することが父にとっても安心なのだろう。 父らしい一面としては、 母以外の家族の電話が鳴ると、 一度は 「ママに電話かけたはずがなんでそっちに掛かっちゃうのかなあ」 というのも毎日の日課だ。 最近は電話もかけると出れるようになり、 不在着信をしておくと電話がかかってくる。 父にとっては進歩だ。 また明日帰宅する。
 孫の泰史によろしく頼むと連絡がきた。 どうやら小生にはリフトの使用をお願いしたくないようだ。
 祖父と孫の信頼関係が垣間見れる。

*(耕史記)****************************

 

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