5月号「所感」
今月の所感は、Youtube動画配信による支援終了のご案内と、名誉会長の近況、会長の想いが伝わる内容となっております。
*2021年5月号 所感 ********************
緊急事態宣言が解除され、 ホッとしたのもつかの間、 今度は 「まん防」 という言葉がニュースや新聞で出回っている。 海の中にいる 「マンボウ」 をついイメージしてしまうのは小生だけか。 一年前の四月七日 「緊急事態宣言」 という言葉にとても重みがあり、 国民の移動も止まった。一年後の四月七日。 人数の増加の状況をみてみると、 この 「まん防」 というネーミングから、 どうしても緊張感が薄れて国民の移動がなかなか収まらないのではないかと疑ってしまう。
昨年の緊急事態宣言が発出されて以降、 小生も外出自粛で公的な施設や、 お稽古もお休みが続いていた支部長のお話を聞き、 少しでも会員諸氏のお役に立てればと思い、 YouTubeでの競書の動画配信を続けてきた。
ようやく三月の首都圏の緊急事態宣言も解除となり、 施設の再開や感染対策を行った上の対面でのお稽古の開始の声が多く聞けることになった。
まだコロナ前にはいかないと思うが、 先生方へまたバトンタッチをし、 会員諸氏への動画配信はひとまず終了させて頂く。
一月より、 コロナ禍の転換により、 我が日本書鏡院もオンラインでのマンツーマン授業・写真添削授業を開始し、 今アメリカと地方の方とマンツーマン書道が始まった。 今までは自分が出向いてお稽古するところが、 幅広い地域の方に、 お互いの自宅で指導できるのだ。
カメラを使って小生の筆先の動きを見てもらい、 添削した後に実際書いて表現してもらう。
今の世の中、 密になる時間がなかなか出来ない世の中。 画面越しではあるが、 一対一であるからこそ丁寧できめ細やかな指導がいきわたることが、 このオンライン授業の特徴なのではないかと考える。
外出することに少しでも不安な気持ちがある会員諸氏の皆様、 一人で作品に取り組んで少し指導してもらえたらありがたいと思う会員諸氏の皆様。
インターネットはできないから 「無理」 と思っている皆様。
わが日本書鏡院は、 「書」 で、 文字も心も温まる空間を提供していきたいと考える。
そこには小生並びに心温かい諸先生方も会員諸氏に寄り添いたいと思う。
四月四日、 筆供養を無事に終えることができた。
雨も心配されたがなんとか執り行うことができ、 自宅に戻った父も車いすで、 久しぶりに日本書鏡院の行事に参加することができた。
最初は遠慮気味だった父だったが、 挨拶を促すと声を張り、 皆さんに元気な姿を見せることができた。
今までベッドにいても寝たきりで、 テレビを見ることしかせず、 私たち家族が色々な事を促しても 「嫌だ。 やらない。」 と言っていた父。
なんと次の日から 「墨と筆と紙を用意してほしい」 と力が入らない手で、 一生懸命 「墨」 を磨り始めた。 ケガする前は何時間も机の前で十丁型の墨を磨っていた姿がよく思い浮かぶが、 今では、 たった数分で疲れてしまう。 それでもなんとか 「総」 の字を篆書で書き上げた。 墨は薄いし、 筆も震えながらの作品だ。
急に父をここまで奮い立たせ、 筆を持たせるパワーを与えてくれたのは、 筆供養のイベントとそこに集まって下さった日本書鏡院で何十年も共に歩んできた諸先生方と久しぶりに会えたことで、 これも皆々様のお蔭であると思う。
三月九日から一月十八日までこのコロナ禍の状況で、 父は直接会えない辛さをたった一人で十ヵ月以上体験した。
父に対する温かい言葉が直接父に伝わったこと。 人とのふれあいが心を溶かしてくれたこと。 介護をしている家族としてまた一つ勉強させてもらった。
*(耕史記)****************************